雇用差別を許さないネットとやま
正式名称:女性差別・非正規差別など雇用差別を許さないネットワークとやま
シンポジウム「未来を拓く女性と労働組合」参加報告
シンポジウムは、主催が実行委員会形式で1月26日(土)、27日の2日間にわたり、北海道、仙台、新潟、名古屋、京都、大阪、地元東京の労働組合・女性団体・個人、そして当会:「雇用差別を許さないネットとやま」から2名と、延べ124名、参加組合22、団体5、取材2、研究者7、個人23名の参加で行われました。開催場所は、26日、明治大学駿河台校舎 リバティタワー、27日、同校舎 グローバルフロントの一室です。貴重な機会に参加できました。
冒頭、司会の屋嘉比さんから「劣悪な労働環境の中で、ユニオンでは一人一人に丁寧に対応してきた。新しい知恵を出し・新しい動きを作り、均等待遇やILO条約の批准に向けた全国的な流れや全国ネットワークを作りたい」と挨拶がありました。
◆1月26日(土)経験交流会・組織化のワークショップ、懇親会
15~19時:全員で所属団体・氏名の自己紹介の後、6班に分かれ、①各組合の運営②活動の課題と対策③展望(組合の連携で取り組むなど)についての経験交流を行いました。
次に、地域で新しい仲間を増やすためのワークショップに取り組み、組織化のプロセスを学びました。
19~21時:懇親会 地域を超えて集まった女性たちが、顔の見える関係を作り、今後の活動で共働できる可能性が生じたと思います。
◆1月27日(日) 分科会・全体会
10~12時:分科会: 働く女性が抱える課題から、6つのテーマで分科会が行われました。
分科会1【正社員でない働き方】
テーマ:雇用差別をなくすために
~みつめよう、語ろう! 自分の働き方を~
分科会2【職場の女性差別】
テーマ:均等待遇を実現するために
~やってみよう!国際基準の職務評価~
分科会3【ハラスメント:マタハラ】
テーマ: NO!マタニティハラスメント
~妊娠・育児によるハラスメントがない社会へ!~
分科会4【ハラスメント:セクハラ】
テーマ:セクハラのない職場をめざして、私たちができること
~これってセクハラ? 私たちのモヤモヤはき出そう!~
分科会5【福祉のしごと:介護】
テーマ:虐待のない職場づくり
~理想のケアを目指しながら、自らもサバイブするために~
分科会6【福祉のしごと:相談・支援】
テーマ:相談から自分らしさを取り戻すための支援
~支援者は自分らしく共働できていますか?自らもサバイブするために~
「雇用差別を許さないネットとやま」2人は、分科会1【正社員でない働き方】に参加しました。
「プロブレムツリー」という問題分析の手法を使い、ワークショップを行いました。
①問題となる現象を具体的に挙げる(木の葉)→②なぜ?そういうことが起きるか(木の幹)→③原因は何か(木の根)と参加者全員が矢印の方向に意見を出し、問題を掘り下げていきました。職場の様々な困難な状況を整理する中、「最低賃金のアップ」「女性の仕事の正当な評価」「均等待遇」「雇用の安定」などが必要であると、まとまりました。各分科会で意見交換の中で「キャッチコピー」が作られました。(後日報告)
13~15時:全体会 「仕事の世界を変えるのは私たち~均等待遇・差別の撤廃・尊厳を求めて」
各分科会からの報告を全体で共有し、それをもとにパネルディスカッションで、働く女性の問題を整理し、均等待遇や差別撤廃に向けて、現実を変えるために、今後どう取り組んでいくかを話し合いました。今回の集まりは女の連帯の出発。地域・ユニオンで痛みを出すことでエンパワーしよう。成功事例の共有や日常的にユニオンの交流をしよう。全国各地の人がつながるツールを作ろうなど、「やりましょうはやること」との締めくくりの言葉がありました。
山口さん参加の初日の分科会で「それぞれのユニオン・地域の人が出会うエンパワーの場を作る。楽しめる場を作ろう」と意見がまとまり、「体験交流会in富山」(仮称)の開催が提案されました。きんとう基金から交通費・宿泊費の全額補助があった上に、学ぶことが多く、交流もでき、有意義なシンポジウムでした。 以上
2018.10.6 講演報告
講演報告
講師:パトリシア・シュルツ国連女性差別撤廃委員会委員・個人通報作業部会長
題目:「なぜ女性差別撤廃条約選択議定書の批准は必要か」
1 女性差別撤廃条約と選択議定書の概要、2 女性差別撤廃条約、選択議定書と日本
3 結論 の順に講演がありました。
「選択議定書の二つの手続き」
・選択議定書は、「個人通報」と「調査」の二つの手続きから成っている。女性個人または女 性の集団は、自分たちが受けた個別の個人的な差別に対して争うことができる。調査制度を通して、女性はNGOとして、集団で委員会に対し、女性の権利の重大または組織的な侵害について情報を提供し、調査の開始につなげることができる。しかし、「調査」は、拒否することができる。批准した109か国のうち5カ国が、選択議定書を個人通報制度に限定している。
「個人通報の現況」
・36カ国に住む女性から131件の個人通報を受け付けている。48件が検討中。
審査したもので権利侵害あり28件、権利侵害なし5件、形式的理由で受理可能性なし39件、審査停止11件。
「批准がなぜ必要か」について
・選択議定書の目的は、女性個人、または女性の集団に、自分たちの権利、特に差別されない権利の侵害に対してたたかう更なる可能性を与えることである。
・選択議定書の批准は、司法をより啓蒙することになり、女性の権利がよりよく保護されるために一層必要である。
・今多くの国で、特に女性の権利に関してバックラッシュが起こり、市民社会の空間が縮小されるのを見るにあたり、日本の選択議定書の批准は、政府が自らの人権へのコミットメント(公約※報告者の訳)を確実にするという証になる。
「日本政府が選択議定書の批准をしていないこと」に対して
・委員会は、実質的平等には実質的な措置が必要であり、ジェンダー平等が前進するためには政治的意思が鍵であることを強調し、批准を繰り返し勧告してきた。
・政府は、批准が司法制度に影響を与え、なかでも、司法権の独立を侵害するとおそれている。
「司法権の独立を侵害するというおそれ」について
・批准は、日本の主権行使の一環。委員会が日本の司法の行為について審査する可能性を受け入れた場合も、司法の役割の侵害はない。むしろ他の多くの国々のように日本が、人権における必要な進化として司法の行為の外部審査を認める国の1つになるという表明になる。もちろん、政府、国会や司法が、委員会の決定をよしとしないこともあるだろう。これこそが、批判的な審査を可能にするという、選択議定書の手続きの趣旨である。人権の保護には、まさに国及びその司法当局の決定とは対立する場合がある。
・109か国が批准している。日本の憲法のように多くの民主主義的憲法は、司法権の独立を確認し、日本国憲法76条から82条が述べるように、法律の合憲性を審査する権限を含む、司法のそれぞれの機関の権限を規定している。それらの国々の政府は、最高裁判所または憲法裁判所が日本の最高裁と同じように非常に大きな権限を有している場合でも、選択議定書の批准による司法権の独立の侵害を恐れない。日本は、国際人権法の進化に逆行している。
「結論」
・日本政府には、これまでに批准がもたらす潜在的リスクを検討する十分な時間があった。日本が、委員会による女性の権利の侵害を認める決定を受けるかもしれないと懸念しているのであれば、それは妥当な懸念である。まさに、批准する意味はここにある。個人通報が受理された36カ国、または調査の対象となり報告が公開された4カ国において、司法が損なわれた、ということは聞いていない。むしろ、これらの国々は、条約の意義、自国とその司法の責務について、よりよく理解するようになった。人権の保護における司法の基本的な役割は、国際的な審査を受け入れることによって強化される。 以上
(報告:本間啓子)
10.6 原告としての発言
東和工業コース別男女差別裁判元原告の本間啓子です。
私は設計経験12年、他の男性と同等の仕事をし、後輩の指導も行っていました。2級建築士の資格を持っているのは部長と私だけでした。会社は、コース別雇用管理を導入した際、コースを男女別に振り分けました。設計職7名の内、6名の男性は後輩を含め全員が総合職となり、私のみ一般職とされました。一般職にされても退職するまで、専門性の高い設計業務を続けてきました。
私は、総合職に是正することを訴え続けましたが、聞き入れてもらえず、在職中に提訴しました。
是正を求める中、上司から「女の人が外で働くことは好きではない。まして、専門職に就くことはなお気にいらない。」と言われて、パワハラに苦しみ、性別役割分業意識に基づく女性差別の根深さを痛切に感じました。
地裁も高裁も判決で、「原告の技能レベルが低いから一般職にした」という会社の主張をしりぞけ、「労働基準法4条違反」と認めました。そのうえで「一般職として支払われていた賃金と総合職の賃金との差額を支払え」と命じました。
しかし、地裁、高裁とも、差額賃金は、基本給の内、年齢給部分だけを損害と認め、職能給部分は認めませんでした。
高裁は、「人事考課が企業の裁量的判断によるものである」との理由で、一般職で主任だからといって,総合職として処遇されていれば当然に主任に昇格していた高度の蓋然性を示す証拠はない。」としています。
このような控訴審判決では、会社が、男女別にコースを振り分けた差別の隠ぺいを図るために、職務能力が低いと虚偽の主張をしても容易に認められる結果となり、原告がどのように立証しても、格差が認められないことにつながります。
実際、高裁は、「原告は応用が効かず、細かく指示を与えなければできない」という上司の評価をそのまま採用しました。この判断は、前述の「原告の技能レベルが低いから一般職にしたとの理由は裁判提起後の後付けである」との判断と、明らかに矛盾しています。
このように、裁判所は、職務の評価を怠ったうえに、判決に明らかな判断矛盾を犯してまで、自らが差別を認定した企業の裁量権を最優先し、ジェンダーに基づく差別に踏み込もうとしませんでした。
その他にも、消滅時効、退職金差額についての判断の誤りを認めず、年金格差相当の損害も認めませんでした。年金を通し、一生差別が是正されない状態が続きます。
私は最高裁に上告しましたが、昨年棄却となりました。
結局、裁判で女性差別を認めても原告の救済には至らず、逆に、本来差別が無ければ被告が支払うべき賃金・退職金の差額の一部しか支払わせず、会社の「差別はやり得」を許す結果となりました。
このような事態は、差別をさらに拡大再生産させ、差別の強化につながり、女性差別撤廃の動きに逆行します。性差別賃金であると判断したからには、賃金格差の全額を是正し、あるいは将来にむかって格差を是正する措置を講ずるべきです。
選択議定書の批准を強く求め、私はこの事件を個人通報することにより、国内の「賃金差別の撤廃」と「差別からの救済」に少しでも寄与できることを切望いたします。 以上